生姜の成分であるショウガオールの生成実験
生姜は最も身近な生薬
生姜は料理に、薬味に、様々な形で利用することが出来ます。そんな生姜は、私たちにとって最も馴染みの深い食材の一つでもありますが、古来より生薬、漢方原料としても使われ続けてきた一面もあります。
生薬として生姜を使うとき、症状やその用途に合わせて生姜と、乾姜を使い分けて使用します。
ジンゲロールに熱を加えたとき、脱水反応が起こることでショウガオールに変化すると考えられています。
冬の生姜商品について
冬の寒い時期には、生姜が様々なメディアで生姜が取り上げられ、小さなブームになります。
近年でも、ウルトラ蒸しショウガというものがテレビや雑誌で大きく取り上げられました。
このウルトラ蒸しショウガとは長時間蒸した生姜の乾燥品、つまり乾姜のことで、実は古くから生薬や漢方として使われていたものです。
ウルトラ蒸しショウガの作り方は、生姜を繊維の沿う方にスライスし、30分ほど蒸した後に乾燥させます。
この蒸すという一手間により、生姜のジンゲロールの一部がショウガオールに変換されます。
では、最適な蒸し時間は? 温度はどのくらいが良いのか? 他の加熱方法ではどうなるのか?
ショウガオールに注目し、その生成方法について2年にわたり研究してきました。

冷え性は女性に多いといわれていますが、近年では男性にも冷えを訴える場合が多いことも分かってきました。
冷え性の原因としては、自律神経の機能低下、着衣の薄着傾向、生活リズムの乱れ、遺伝的要因、空調の普及により寒い環境に突然曝される機会が増えたことなどが挙げられています。しかし、根本的な原因については現在でも解明されていません。
最近の研究において、冷え性気味の若年女性が生姜を摂取したとき、非摂取時に比べてエネルギー消費が有意に高まることがわかりました。さらに、生姜10~20gを加熱して摂取したときには体幹部を中心に3時間ほど身体を温めることが報告されています。
ショウガオールの高効率な生成実験1 – 生姜品種の系統選抜
蒸す或いは湯通しで加熱することが有効であることは先人方達の長年の経験により分かっています。
さらに現代の科学により熱を加えることでジンゲロールがショウガオールへと変わることが裏付けられています。
そして現在にあって昔にはなかった新技術を応用することができれば、このショウガオールの生成についてより効率的で有効なアプローチが可能なのではないかと考え試験に取り組みました。
先ず、生姜の系統選抜試験を行いました。
現代では 200種を超える生姜の品種から文献や研究資料などを参考に、20種程度の品種に絞り込み、サンプルを取り寄せて分析を行いました。その結果、生姜にも品種によって成分量にかなりの差があることがわかりました。
今回の試験結果にて、含有成分量がとくに優れていた生姜dと、成分量としては一般的であるが、他の生姜にはない成分があり、社内官能試験にて評価が高かった生姜cを今後導入するものとして採用し、後のショウガオール生成試験に使用しました。
ショウガオールの高効率な生成実験2 – 加熱方法の検討
次に、加工方法について蒸す条件について、或いは蒸すといった加工法にこだわらない新しい加工方法などについて検証しました。
結果、過剰な処理時間による蒸し、或いは加熱効率や成分破壊の影響を考えて採用した新たな加工方法(加工法候補1および2)についてショウガオールの大きな生成が見られました。
今後、先人達の知恵を深く学び、現代の技術を応用することで、今までにない素晴らしいものをつくることが出来るようになるかもしれません。
加工法候補1と2の詳細については、現在、小川生薬で技術開発中の加工方法であり、導入を予定している技術であるため、現時点での詳細は伏せさせて頂きたいと思います。
ショウガオールの高効率な生成実験3 – 加工条件の最適化
最後に、最も優れた加工法の最も効率の良い加工条件を見つけ出しました。結果、蒸して乾燥した物よりも大きなショウガオールの生成が実現可能となりました。
実験2より、ショウガオールの生成が1番良かった加工方法について、加工温度の最適な(最も効率がよいと考えられる)温度帯を調べました。
さらに、定めた加工温度にて処理する時間の最適な時間を導きました。
今回の試験でのショウガオールとジンゲロールの定量は、HPCL(高速液体クロマトグラフィー)を用い日本薬局方の定量方法に順ずるかたちで測定を行いました。
含まれるショウガオールの高さから過剰摂取の可能性を考慮し、今まで食されてきた経験の長い通常乾姜をご案内させて頂いております。
今回の実験にて開発したショウガオール高含有の原料は、今後、“冬”をコンセプトとした商品のブレンド素材などにて投入を予定しています。