Ogawa Crude Laboratory

昔から受け継がれてきた 製造部の技

小川生薬の長い年月の中で培い、現代にまで受け継いできた生薬加工に関する技術力やノウハウを少しだけですが、ご紹介したいと思います。
▲1950年頃の小川生薬
▲2016年の小川生薬

1925年(大正14年)に徳島県で創業を開始した小川生薬は、四国山地と讃岐山脈に囲まれた生薬製造業にとって非常に恵まれた環境のもと、地元に根付き、生薬の全国発信に向かって着実に進んできました。 そして現在では、これまでに培ってきた独自の加工技術を、最新の製造機械に融合してさらに発展し、この生薬製造業界でも一定の役割をになえるようになりました。

小川生薬は、柔軟にお客様のお声に対応するために、培ってきた技術や歴史を重んじながらも新たなチャレンジに取り組みたいと思っております。 現代において日々解明されていく科学的なエビデンスと、今まで小川生薬が築き上げてきた知見を互いに補いながら考察し、製品の製造へとリンクさせていくことが重要であると考えています。 小川生薬 製造部の製品作りの工程 小川生薬製造部の基本製造技術を一つ一つ紐解いていきます。

裁断(カット)

ひとことに裁断といっても、原料や最終的な商品の形態により、適切な裁断方法は異なります。小川生薬には様々な種類の裁断機がそろっており、裁断機のタイプや刻む大きさを選びます。 収穫された生薬原料は、品質を保つ意味での鉄則として入荷した日のうちに加工を施します。そして、最初の加工となるのがこの裁断処理になります。 裁断を施すことによって、その後の工程である乾燥をスムーズにします。 裁断による原料の形状の加工は、例えば裁断する大きさだけでも何通りもの可能性があります。原料の成分には()(はつ)しやすい成分もあり、そういった場合には大きめの裁断を行い、できるだけ断片1つあたりの断面積を少なくします。乾きにくいものや湿気を吸いやすいものは細かく刻みよく乾燥させます。また、裁断する原料の堅さや物性によって鋭く裁断する、砕くように裁断するなどの方式も変わってきます。原料の性質や成分に沿った最適な裁断を行い、なおかつ後の加工工程を効率的にすることが製品の品質を高レベルにするポイントです。

乾燥

素早く原料の乾燥を行うことで品質の劣化を防ぎます。 原料によっては、なかなか乾燥が進まないものもあります。そのようなときは乾燥中にこまめに原料をかくはんすることで乾燥のムラを防ぎ、原料を素早く乾燥させることが出来ます。 この乾燥工程で一番注意することは、どこまで乾燥させるかという点です。乾燥が不十分である場合、カビが発生する等製品の品質の劣化を招いてしまいます。かといって過剰な乾燥をしてしまうと、成分が分解あるいは揮発して薄くなり、香味なども飛んでしまい、やはり製品としての魅力を失ってしまいます。 生薬原料によって最適な乾燥があります。しかし、季節や気候によって乾燥をおこなう作業時間も変わってきますので、熟練の技が試される作業です。

選別

生薬は自然豊かな環境でうまれる天然のものですから、他の植物等の異物が混入していることがあります。選別作業は製品作りにおいて欠かせません。 小川生薬は選別機器も多様にそろえています。 ・電動ふるい(大きさによって原料を選別できる機械) ・とうみ(送風して重さによって選別できる機械) ・静電気選別機(静電気によって選別できる機械) ・X線選別機(X線で固い異物を感知してはじく機械) しかし、人の目による選別が最も確かなものであり、最後は必ず人の手で選別します。

焙煎

ともすれば、飲みにくくなりがちな健康茶づくりにおいて、飲みやすさを実現するために、焙煎の工程は製造過程の生命線ともいえます。そのために小川生薬では日本茶の製造メーカーにも採用されている、とても繊細な温度管理が可能である焙煎装置を導入しています。 さらに、小型で同じ仕様の焙煎装置が研究開発室に導入されており、商品開発時により多くの焙煎方法を実際にテストできることにより、確実な研究結果を導き出すことが出来ます。 加工する原料、作る製品によって焙煎の温度はもちろん異なります。各原料に最も相応しい焙煎温度を追求して調べることができ、そしてその結果を再現した製品づくりすることができる体勢を取っています。
小川生薬 製造部署の製品作りの工程(特殊な加工)
一部の原料については、蒸し工程や薄くスライスする機械を使用します。

水洗いスライサー

水洗い装置は、強力な水圧と回転するブラシの両方の力を使って原材料についている泥等を強力に落とします。 生姜やごぼうなど主に土の中で育った原料に対して使われます。 水洗いで泥を綺麗に落とした原料は、そのままの状態でスライサーを通って、薄くスライスされて装置から出てきます。

蒸し機

小川生薬の蒸し機は、他では見られないほど非常に長い時間まで蒸し処理ができる特別仕様の蒸し機です。 加熱によるプロセスが有効な原料について、この蒸し機が使われます。 例えば生姜に含まれるショウガオールという成分は加熱することによって増加することが分かっています。その他、青汁シリーズに使用しているくせのある原料も飲みやすい味に仕上げるために蒸し処理を施しています。柿の葉のビタミンCは他のどの加熱方法よりも蒸した方が多く残存することが研究で報告されています。
それでは次に、これらの加工技術をつかって実際に製品を作っている例をご紹介いたします。

ごぼう茶

おとろえない人気を誇る小川生薬のごぼう茶は、余計な加工を一切していません。 通常、ごぼうを料理で使うときなどはごぼうのアクが強いため、ささがきにして水にさらして一度アク抜きを行うかと思います。しかし、水にさらしてしまうと、アクと一緒に、ごぼうに含まれているポリフェノール類が流れ出してしまいます。 小川生薬のごぼう茶は、単純にごぼうを皮ごと丸ごと水洗いして泥を落とし、スライスした後に即時乾燥させています。そして、さきほどご紹介した研究開発室の小型焙煎機で追求した焙煎条件によっておいしく味作りしていることがもう一つの重要なポイントです。 加工で余計な処理をしないことで、栄養分がまるごと含まれています。その証拠に、スライスされたごぼう原料の断面にはポリフェノール色素の深い茶色の輪が浮かび上がっています。製品のごぼう茶を飲むと、ごぼうの風味が丸ごと活きていることがわかるかと思います。

黒蒸し生姜粉末

小川生薬の製品の中で、冬の定番品である黒蒸し生姜粉末は他では見ることができないほど長い蒸し処理を行っています。蒸しあがった後の生姜原料は黄金色に輝いています。 そして蒸し処理を終えた生姜は即時乾燥して、きめ細かい粉末状態に加工し、滅菌処理の後、製品として完成します。 黒蒸し生姜粉末は様々な料理に使っていただくことができます。また、微粉末なので生姜の繊維が気になる方にもお勧めできます。 最近では、生姜を加熱することで生成されるショウガオールという物質に注目が集まっており、毎年の冬にはテレビ番組や雑誌に取り上げられる機会が増えてきました。
独自技術“黒蒸し”について 生薬の世界では、“黒焼き”といって素材を真っ黒になるまで火を通した民間薬が存在します。作用の原理は明らかになっていませんが、妙薬として古くから重宝されてきました。 黒焼きをつくる際には、原料を密閉して酸素になるべく触れさせないよう閉じ込めた上で、原料が真っ黒に仕上がるまで高温で長時間の蒸し焼きにします。 小川生薬では、黒焼きほど黒く焦がして仕上げることはありませんが、この未だ解明されていない古くから伝わる民間薬の黒焼きを参考に、機械が発達した現代において可能となった、低温でじっくり、長時間ゆっくりと蒸す製法、その独自の加工技術を“黒蒸し”と呼んでいます。

玄米珈琲

小川生薬の玄米珈琲は、独自の焙煎時間8時間以上という超長時間焙煎による深煎り技術で実現した商品です。 この深煎りによって、他にはない独特の深いコクと香ばしさが生まれます。さらに、この深煎り製法は有害物質の生成を抑えることにも一役買っています。 玄米珈琲を開発するに当たり、危険回避のための情報収集の際に問題としてあげられたのは“アクリルアミド”という有害物質が生成される危険性についてでした。 アクリルアミドはアミノ酸と糖類とが120℃以上で加熱されると反応してできる物質です。こげ色が強いほどアクリルアミドがよく含まれると言われています。 このアクリルアミドは動物実験や生理学的な見解によって、DNAを破損させる可能性があると分かっていることから、人にとって恐らく危険なもので、恐らく発がん性があるものとして分類されています。 世界的には、2002年に食品中にアクリルアミドが含まれることが発表されてから、こげ色が強いものはできる限り摂取しない方が良いものとして危険視されることになりました。 グラフは、農林水産省の「食品中のアクリルアミドの含有実態調査」のデータから、嗜好飲料のうち原料体の測定を行っているものを抜粋し、小川生薬の玄米珈琲のアクリルアミド測定値を並べたものです。
アクリルアミドは、ある温度より高い温度で焙煎処理すると分解されて減少していくといった特徴があります。 しかし、いきなりアクリルアミドが分解される温度で焙煎を行うと、原料である玄米が弾けて欠けてしまい焙煎ムラの原因となることや、焙煎後の味や香りも製品としては認められないものとなってしまいました。 小川生薬では、この玄米珈琲において、アクリルアミドを製品に含ませない方法と、香り高くおいしく仕上げる方法とが両立できる焙煎条件を模索し、結論として8時間以上の長時間焙煎を行う製法に辿り着きました。

どくだみ茶

小川生薬のどくだみ茶は、小川生薬の健康茶製品の中でも1番のロングセラー商品となっており、多くのお客様に愛飲していただいております。 どくだみという植物は古くから薬草として使われてきました。小川生薬では独特な臭気を持つが体に良いと言われているどくだみを、毎日好んで飲んでいただけるようにおいしいどくだみ茶に加工しました。 どくだみは乾燥処理の面で他の薬草とは大きく異なる特徴を持っています。 それというもの、どくだみは乾燥装置を用いて強制的に短時間で乾燥処理してしまうと、独特の臭気が残こってしまい、味には強烈な酸味が出てしまいます。 そこで、小川生薬の長年の知見に基づき、ゆっくり熟成させるように乾燥を行うことで、独特の臭気は消え、強い酸味は自然な甘みに変化させることに成功しました。
しかし今度は、時間をかけて乾燥を行うことによって、どくだみの葉の品質を損なうリスクがでてきます。そこで、長年生薬を見続けてきた確かな目によって高品質などくだみ茶葉のみに選別を行います。 小川生薬のどくだみ茶は、小川生薬が培ってきた生薬加工の基礎を集約した結晶でもあります。