Ogawa Crude Laboratory

設備紹介



小川生薬では、自分たちの目がしっかりと届く範囲で、安心・安全な商品を作りたいとの思いのもと、原料の生産から加工、販売までを一貫して行っています。最初から最後まで自らの手で責任を持って商品作りを行ううえでは、単なる思い入れや自社の技術の遂行、さらには経験値に基づく試飲だけではなく、客観的な視点から専門の分析機関による品質や成分の分析管理も欠かせません。そしてそれ以上に、迅速かつきめ細かな社内検査は必須とも言えます。 このページでは、社内検査において特に使用頻度が高い機器や、科学の世界でもよく使われている機器をその原理と共にご紹介したいと思います。

●水分計

自然界の物質には水分が含まれています。わたくしたち人間も約60%は水分だといわれています。水分計では、物質が持っている水分の含有度を算出します。 その仕組みは次のようになっています。原料に熱を加え、含んでいる水分を飛ばしきります。その時に減少した重量をもとに、原料に含まれている水分をパーセンテージで算出します。仕組み自体は、意外にシンプルですね。小川生薬ではこの水分計を、原料が入荷した時や、商品状態のチェック時など品質管理の際に用いています。 生薬は保存性を高めるためによく乾燥処理が行われます。どこまで乾燥させればよいのかは、生薬によってそれぞれ異なります。乾燥が不十分である場合はカビや商品の思わぬ劣化を誘発してしまいます。また、十分に乾燥できていたとしても、原料や商品の管理状態が悪いと、湿気を吸い乾燥が不十分な状態に戻ってしまいます。このように生薬の管理と加工においては、水分は非常に重要な要素であると言えます。

●遠心分離機

どのご家庭にもある洗濯機の脱水機能は、遠心力によって水気を飛ばしています。この脱水機と同じ原理で、遠心力によって液体と固形物質(大きな分子の物質)に分けることができるのが遠心分離機です。後に出てくるHPLCを使用する時の前処理には欠かせない存在です。 その他、微生物実験では、微生物を培養液で増やした後に微生物だけを取り出す際にこの遠心分離機を用いて微生物を沈殿させます。 健康茶原料等の成分を測定するときは、遠沈菅(えんちんかん)と呼ばれる容器に原料と、水やエタノールなどの溶媒を加えて測定したい成分をよく抽出させます。そして遠心分離機にかけて原料体と溶媒に分離します。測定したい成分は溶媒中に溶け出しているはずなので、溶媒液のみを取り出して分析します。

●HPLC

(高速液体クロマトグラフィーHigh performance liquid chromatography) 例えば、生姜に含まれ体を温めるといわれているショウガオールという成分が、最終的に製品となったときにどれだけ含まれているか調べるとき、HPLCが重宝します。 生薬のような天然の有機物を構成している成分は単純なものではなく、様々な成分が複雑に含まれています。そんな中である単体の成分のみを検出して量を量ることができます。成分は加工により減少するのが一般的ですが、その成分を可能な限り残し、またときには凝縮することで、より良きかたちでお客様にお届けすることを小川生薬は大切にしています。 HPLCでは、先ず生薬の成分を相性が良い溶媒を用いて抽出します。次に、成分が溶け出た溶媒をHPLCの装置へ注入してカラムと呼ばれる筒に通します。カラムの中では、様々な成分が絡め取られていき、分離されることになります。そして、カラムに絡め取られにくい成分から順に検出器へ送られ、成分ごとに検出強度が表示されていきます。 HPLCは液クロなどとも呼ばれ、非常に便利で画期的な実験装置ですが、目的の成分のみを分離するために様々な条件を検討する必要があり、非常に扱いが難しく技術力を試される実験装置でもあります。

●恒温槽

恒温とは、温度が一定であることを言います。温度を一定に保つという意味では恒温槽は、エアコンや冷蔵庫と通じるものがあるかもしれません。しかし、恒温槽は科学実験のために、よりシビアに温度管理して外部の気温に影響されず、装置内の温度を一定に保つことができます。 恒温槽は菌検査の際に、菌を増殖させて目視できるよう培養に用いるほか、商品の加速劣化試験などにも使用します。

●オートクレーブ

装置内部を高圧力にすることができる機械で、圧力鍋もオートクレーブの一種です。 高圧力と100℃以上の高温で装置内を満たし、殆どの微生物を完全に除去することができます。あらゆる微生物を完全に除去することを専門用語で「滅菌」と呼びます。 菌検査や菌の培養実験を行う際には、意図しない菌の増殖を防ぐために使用する器具や試薬の滅菌を行わなければなりません。また、菌を用いた実験を行った後は、衛生管理の面や環境汚染防止の面から使用した器具、試薬、廃棄するサンプルなどすべての滅菌を行わなければなりません。オートクレーブは最も一般的な滅菌装置です。さらには、高温・高気圧の条件をつくることができるため、生物学の分野だけではなく化学的な分解反応や合成反応などにも使用されます。

社内検査の例

入浴剤ぽっかぽっか(医薬部外品)の有効成分であるグリチルリチン酸の測定
①原料を粉砕し、溶媒と混ぜて成分を溶かしだします。
②遠心分離機にかけて、グリチルリチン酸が溶け出している液体と残渣とを分離します。
③ろ過して残渣を取り除きます。
④さらに細かいメンブレンフィルターというものを通してさらにろ過したものをサンプル液とします。
⑤指定している条件にてHPLCにかけて分析を行います。
⑥得られた分析結果から含まれているグリチルリチン酸を算出します。

●施設内の菌検査 (衛生状態チェック)

①検査する箇所を綿棒でふき取り、滅菌水にさらしてサンプル液とします。
②菌が多すぎる場合を想定して、希釈したサンプル液を作製します。
③専用の培地と一定量のサンプル液を混ぜ合わせます。
④この時点では菌を目視することができないため、培養を行って菌を増殖させます。
⑤一定期間の培養の後得られたコロニーをカウントして菌数とし、汚染の度合いを調べます。

コロニーカウントによる菌検査の原理

コロニーとは集団という意味で、微生物実験では菌が増殖した集団を指します。 単一の菌は目に見えず、一定のエリアにいる菌数を数えることは困難ですが、菌が増殖しコロニーを形成することで目視することができ、菌数を求めることができます。殆どの菌は自らの力で動き回ることができないので一つの菌はその場で増殖し一つのコロニーを作り出します。