Ogawa Crude Laboratory

どくだみ栽培プロジェクト

薬草を栽培する取り組み

人類はその長い歴史の中で、野山などの自然界に自生している生薬を採取して、様々な症状や疾患に用いてきました。
そしてその知恵は現代にまで伝えられ、今日では品質面から日本国産の生薬に注目が集まっています。

しかし、昔と比べて生薬の採取者が少なくなり、さらに高齢化の影響でその収量も多くは望めないといった問題がでてきました。それに加え、採取場所についても採りやすい場所から採取されること、或いは最近の激しい気候の変動が原因で、今では滅多に見られなくなってしまった生薬もあります。

▲薬草類の育苗のための温室ハウス
また、これまで海外から輸入していたような種類の生薬においても、今では輸出国内での消費が高まり、今後種類によっては今まで以上に手に入りにくくなる可能性が危惧されています。

そこで、小川生薬では薬草類を栽培する取り組みを始めました。
様々な薬草の実地での栽培に向けて試験栽培を行っています。

▲野生のボウイ(防已)
▲野生のクロモジ(黒文字)
▲水耕栽培したどくだみ(十薬)
根の細部まで全草の様子が良くわかる

徳島県西部の動き

中山間地域における薬用植物の生産振興による地域経済循環

現在、高齢化と過疎化が進む中山間地域の新たな換金作物として、薬用植物の一つどくだみの栽培が注目されています。
徳島県において“中山間地域における薬用植物の生産振興による地域経済循環”という事業がはじまりました。

この事業では、他の作物と比べて栽培に特殊な技術が必要ではないどくだみを栽培し農家の新たな収入源とすること、またそれを地元企業である小川生薬が健康茶などの製品として販売を行い、さらには生産拡大を目指し、地元への雇用を促進することが大きな目的となっています。

どくだみは薬用植物としての利用価値があり、古くから健康茶など民間療法に用いられます。
小川生薬でもどくだみ茶どくだみお風呂用パックとして商品を販売しています。
どくだみ茶では、古くからどくだみの加工を行ってきた独自の知見から、ゆっくりと熟成するように葉の乾燥を行い、出来上がりのお茶の味は他のどくだみ茶にはない甘みを含んだものとなっています。

将来を見据え、今までの小川生薬の運営体制にはなかった“薬草の栽培”という取り組みに力を入れ始めました。
そして、このような事業に係わらせていただく機会がうまれました。
日ごろより地元貢献を掲げる小川生薬にとって、このような事業をお手伝いできることは幸いなことです。

参考リンク:中山間地域における薬用植物の生産振興による地域経済循環地域の元気創造プラットフォーム公式サイト

中山間地域における薬用植物の生産振興による地域経済循環

どくだみの栽培試験(栽培暦の作製)

山の中はもちろん、道端や庭先、街の建物と建物の間などでも自生しているどくだみは繁殖力や生命力が旺盛なことで知られています。
しかし、どくだみを耕作作物として人の手で栽培するとき、どのように栽培をすればよいのか、栽培にあたり適している条件がどのようなものなのか、その栽培方法は多くの不明点を含んでいます。

その不明な点を明確化するために、様々な条件下にて栽培の試験が行われました

施肥する量や、資材の種類などでどくだみの生育に影響はあるのか、収量は変わってくるのか、植え付け方はどのような方法がよいのか、など様々な検証を行いました。

試験区完成図

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▲試験区完成図(クリックで拡大します)

どくだみの栽培試験

2015年 入梅にどくだみを植え付けました。そして、月に一度の生育の状況調査を行いました。
2015年の秋には第一回目の収穫を行い、収量調査を終えました。

どくだみは強健な野草であり、病気なども見られず、虫による害や獣害などもないというのが長年薬草をみてきた我々の考えでした。
しかし、実際に栽培試験を行うと、虫による害が認められたり、病気が発生するなどのケースも見られ、今までの常識では計れないことも実際に体験をする上で学ぶことが出来ました。

このどくだみの栽培試験は今後も継続されます。
3年にわたり、生育の調査と、耕作作物としての収量の調査が計画されています。これから先も、薬草の栽培というこれまでにはなかった視点からも生薬の世界を見つめることで、全国のお客様によりしっかりとしたサービスが行えるようになりたいと思います。また、この事業が上手く推移することで、地元徳島への貢献につながることを望みます。

どくだみ

別名:重薬、十薬、ドクダメ、ギョセイソウ、ジャコロシ、イヌノヘ、カミナリノヘソ、ジゴクソバ、ニュウドグサ、ヘビグサ、シビトグサ、ジビョウグサ、ハッチョウグサ

どくだみは、古くから薬草として様々な形で用いられ、時には繁殖能力の高さから雑草として嫌われてきました。6月の梅雨の時期には白く美しく開花します。この時の花びらに見える白い部分は花びらではなく総苞と呼ばれる部分になります。
最近の研究によって、どくだみの葉に優れた殺菌効果があることがわかりました。
昔から馴染みの深かった植物であり、地域によって様々な呼び方で呼ばれています。
10の薬効を持つと伝えられてきたことや、この草1つで馬に対する疾患を10種類も治せると言われることから十薬、あるいは重要なものという意味で重薬と呼ばれます。
繁殖力が高く、雑草化すると駆除が困難であることからジゴクソバ、独特の臭気をもつことからイヌノヘ、ドクダメ、ギョセイソウなどとも呼ばれています。

  • 痔核 全草を日陰干したものを煎じて飲む。生葉の絞り汁を患部に塗るなど。
  • 高血圧、動脈硬化の予防 日陰干にしたものを煎じ、お茶のかわりとして毎日飲む。
  • 便秘 乾燥したものを煎じて飲む。
  • たむし、陰部のただれ 煎じた汁で患部を洗う。
  • はれもの 生の葉や根をすり潰したものを揉んで患部に付ける。
  • かぜ 乾燥した葉を煎じて飲む。また、生葉の絞り汁に生姜の絞り汁を混ぜて飲む。
  • 解毒 お茶の代わりとして飲むことで尿の出を良くするので、長期的に飲む。
  • 腰痛 生葉もしくは乾燥した葉を風呂に入れ、入浴する。
  • 蓄膿症 生の葉を塩で揉むか、糠床に漬け込んだものを鼻の孔に差し込んでおき、5時間ほどたったところで鼻をかむ。
  • 冷え性 全草を入れた風呂に入る。